こんにちは。さいたま市の工務店、パーソナルスタイル株式会社の代表、石田茂城です。
日頃から家づくりのご相談を承る中で、住宅ローンの金利高騰に関するご質問をいただく機会も増えてきました。
前回は、フラット35の金利が3%を超えたこと、そして「待てば下がるのでは」という考え方について触れました。金利が上がる局面では、借入時の条件だけでなく、その後の返し方も家計に大きく影響します。
今回は、繰り上げ返済をどのタイミングで、どれくらいの金額で行うとよいのか、シミュレーションの考え方を中心にお伝えします。これから返済計画を立てる方にも、参考にしていただける内容です。

繰り上げ返済とは何か、なぜ今あらためて注目されているのか
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に、まとまった資金を使って元金の一部、または全部を前倒しで返済する方法です。結論からお伝えすると、金利が上昇している今だからこそ、繰り上げ返済の効果について理解しておく価値が高まっています。
繰り上げ返済を行うと、その分の元金にかかるはずだった将来の利息がまるごと不要になります。借入直後ほど利息の割合が大きいため、早めに、かつ計画的に取り組むほど効果を実感しやすいといわれています。
一方で、住宅ローンには毎月コツコツ返していく安心感もあります。繰り上げ返済が「絶対に必要なもの」というわけではなく、あくまでご家庭の状況に応じて選べる選択肢のひとつとして捉えていただければと思います。

フラット35のような全期間固定型ローンでの位置づけ
フラット35は、借入時に返済終了まで金利が変わらない全期間固定型のローンです。途中で金利が下がっても上がっても、毎月の返済額は変わりません。
だからこそ、家計に余裕が生まれたタイミングで繰り上げ返済を行うことが、利息負担を調整できる数少ない手段のひとつになります。変動金利のように金利見直しで返済額が変わる仕組みとは異なる点を、まず押さえておくとよいでしょう。

前回記事のおさらい「待つコスト」について
前回の記事では、フラット35の金利が2026年6月時点で3.21%(融資率9割以下、借入期間21〜35年の場合)まで上昇したことに触れました。金利が上がるほど、同じ借入額でも将来支払う利息の総額は増えていきます。
つまり、借入時の金利が高いまま返済をスタートした場合、その後の返し方によって総支払額に差が出やすくなるということです。繰り上げ返済は、この差を縮めるための選択肢のひとつとして検討する価値があります。
実際に、ご相談の現場でも「もう少し金利が下がるまで待てばよかった」というお声をいただくことがあります。ですが、過去の金利水準に戻るかどうかは誰にも断定できません。借りたあとにどう付き合っていくかという視点に切り替えていただくほうが、現実的な家計管理につながると感じています。繰り上げ返済は、その「借りたあとの付き合い方」を調整できる数少ない手段のひとつです。
繰り上げ返済には2つの方法がある
繰り上げ返済には、大きく分けて「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。結論として、どちらが良いというものではなく、ご家庭の優先順位によって向き不向きが分かれます。
期間短縮型:利息軽減効果を重視したい方向け
期間短縮型は、毎月の返済額は変えずに、返済期間そのものを短くする方法です。一般的に、同じ金額を繰り上げ返済する場合、返済額軽減型よりも利息の軽減効果が大きくなる傾向があるとされています。
総支払額を減らしたい方や、定年までに完済したい方に向いている方法といえるでしょう。ただし、毎月の返済額自体は変わらないため、家計の月々の負担感が軽くなるわけではない点には注意が必要です。

返済額軽減型:毎月の負担を軽くしたい方向け
返済額軽減型は、返済期間は変えずに、毎月の返済額を減らす方法です。教育費がかかる時期が近づいている、毎月のキャッシュフローに余裕を持たせたい、といったご家庭に選ばれることが多い方法です。利息の軽減効果は期間短縮型に比べて小さくなる場合がありますが、その分、家計の安心感につながりやすい方法ともいえます。

シミュレーションで確認したい3つの数字
繰り上げ返済を検討する際は、次の3つの数字を必ず確認することをおすすめしています。
・繰り上げ返済によって軽減される利息の総額
・完済までの期間、または毎月の返済額がどう変化するか
・手元に残る資金が、今後の生活防衛資金として十分かどうか
金融機関のシミュレーションツールや、住宅金融支援機構が提供する試算ページなどを使うと、おおよその目安を確認できます。ただし、実際の軽減額は金利、残債、繰り上げ返済のタイミングによって変わるため、最終的な数字は金融機関への確認が必要です。
たとえば、返済開始から間もない時期に100万円を繰り上げ返済した場合と、返済期間の後半に同じ100万円を繰り上げ返済した場合では、利息の軽減効果が大きく異なります。これは、返済の初期ほど毎月の返済額に占める利息の割合が大きいためです。「同じ金額を返すなら、できるだけ早い時期のほうが効果は出やすい」という考え方は、シミュレーションをする際の基本として押さえておくとよいでしょう。もちろん、早い時期は手元資金にまだ余裕がないご家庭も多いため、無理のない範囲で検討することが前提になります。
具体的な金額のイメージを持っていただくために、一定の条件を仮定した試算例をご紹介します。借入金額4,000万円、フラット35の金利3.21%(2026年6月時点)、35年・元利均等返済でローンを組んだ場合、毎月の返済額はおよそ15万9千円、返済開始から5年後の残高はおよそ3,664万円になります。
このタイミングで200万円を繰り上げ返済した場合の目安は、次のとおりです。
・期間短縮型を選んだ場合:返済期間がおよそ2年7か月短縮され、利息の軽減額はおよそ292万円になります。
・返済額軽減型を選んだ場合:毎月の返済額がおよそ8,700円軽くなり、利息の軽減額はおよそ112万円になります。
同じ200万円の繰り上げ返済でも、期間短縮型のほうが利息の軽減効果は大きく、返済額軽減型は毎月の家計の負担を直接軽くできるという違いが、こうして数字にするとイメージしやすくなります。
なお、この試算はあくまで一定の条件を仮定した一例であり、実際の金利や残高、返済方法、繰り上げ返済を行う時期によって結果は変わります。正確な金額は、ご利用の金融機関のシミュレーションツールなどで個別にご確認いただくことをおすすめします。

繰り上げ返済を考えるときに見落としやすい注意点
繰り上げ返済は家計にとって有効な選択肢ですが、進め方を誤ると、かえって家計を圧迫してしまうこともあります。結論として、メリットだけでなく、手続き上のルールや資金バランスも事前に確認しておくことが大切です。
最低返済金額と申し込みのタイミング
フラット35の繰り上げ返済には、最低返済金額が定められています。金融機関の窓口で手続きする場合は100万円以上、住宅金融支援機構のWebサービス「住・My Note」を利用する場合は10万円以上が目安とされています。申し込みは繰り上げ返済を行う月の1か月前までに必要とされており、急に思い立ってすぐ実行できるものではない点も覚えておくとよいでしょう。
なお「住・My Note」は、お申込みや取下げの期限が窓口手続きとは異なる場合があるため、利用時は事前にご確認ください。手数料は原則無料とされていますが、契約形態によって条件が異なる場合があるため、こちらも事前確認をおすすめします。

住宅ローン控除との関係に注意
繰り上げ返済によって完済までの期間が短くなり、返済開始から完済までの期間が10年未満になった場合、住宅ローン控除の対象から外れる可能性があるとされています。また、控除期間中の繰り上げ返済は、年末残高が減るため控除額自体が少なくなる場合もあります。
借入金利の水準によって、控除期間中に行ったほうが有利な場合と、控除期間後に行ったほうが有利な場合の両方があるとされており、一概にどちらが得とは言い切れません。控除額とのバランスも含め、税理士や金融機関への確認をおすすめします。

手元資金とのバランスを忘れずに
繰り上げ返済でまとまった資金を使うと、その分、手元の貯蓄が減ります。住宅営業の現場でも、「繰り上げ返済をしたら、急な出費に対応できず慌ててしまった」というお話を伺うことがあります。教育費や車の買い替え、医療費など、将来必要になる支出を見据えたうえで、生活防衛資金を残しながら計画的に進めることが大切です。
私たちがご相談を受ける際には、目安として「生活費の半年〜1年分」を手元に残したうえで、繰り上げ返済に回す金額を検討していただくようお伝えしています。適切な金額はご家庭の収入の安定性や扶養家族の状況によって変わるため、繰り上げ返済を「家計の余力チェック」のきっかけとして活用していただくのもひとつの方法です。
上手な繰り上げ返済の進め方
ここまでの内容を踏まえ、結論としては「繰り上げ返済は、いつ・いくら行うかを資金計画全体の中で位置づけること」が上手な進め方の基本になります。
「いつ」「いくら」を決める判断基準
繰り上げ返済のタイミングを考える際は、ボーナスや昇給など収入が増えたタイミングだけでなく、教育費や車の買い替えなど将来の支出予定も合わせて確認することをおすすめしています。「今ある余裕資金をすべて使う」のではなく、「半年〜1年分の生活費を残したうえで、無理のない範囲で行う」という考え方が、長期的な安心につながりやすいでしょう。
判断基準としては、まず現在の貯蓄から生活防衛資金を差し引き、繰り上げ返済に回せる金額のおおよその上限を把握します。そのうえで、一度にまとめて行うか、複数回に分けて少しずつ行うかを検討し、住宅ローン控除の残り期間や今後のライフイベントとのバランスを見ながら実行時期を決めていく、という流れがおすすめです。

シミュレーションを使った比較検討のすすめ
実際に繰り上げ返済を行う前に、期間短縮型と返済額軽減型の両方をシミュレーションし、利息軽減額や毎月の負担の変化を比較してみることをおすすめします。私たちパーソナルスタイルでも、資金計画のご相談の中で、住宅ローンの返し方についてご一緒に整理させていただくことがあります。数字で比較することで、ご家庭にとって納得感のある選び方が見えてくるはずです。
また、繰り上げ返済は一度きりの判断ではありません。お子さまの進学や独立、収入の変化などライフステージが変わるたびに見直しの機会は訪れます。数年ごとに資金状況を振り返り、必要に応じてシミュレーションをやり直すという姿勢が、長期的な安心につながります。

この記事のまとめ
フラット35の金利が上昇している今、繰り上げ返済は総支払額を見直すための有効な選択肢のひとつです。ただし、期間短縮型と返済額軽減型のどちらが向いているか、住宅ローン控除との兼ね合い、そして手元資金とのバランスなど、確認すべきポイントは複数あります。シミュレーションを活用しながら、ご家庭にとって無理のない計画を立てていただければと思います。
※本記事は2026年6月末から7月初旬の情報です。制度や金利、補助内容などは変更される場合があります。実際のお手続きの際は、最新の情報を金融機関・関係機関にご確認ください。
よくある質問<FAQ>
Q1. 繰り上げ返済は、まとまった貯蓄があれば早めに行ったほうがよいのでしょうか。
A. 利息の軽減効果は期待できますが、生活防衛資金を十分に残したうえで検討することが大切です。急な出費に備える資金まで使ってしまうと、かえって家計が不安定になる場合があります。
Q2. 期間短縮型と返済額軽減型、どちらを選べばよいですか。
A. 総支払額を抑えたい方には期間短縮型、毎月の負担を軽くしたい方には返済額軽減型が向いている傾向があります。ご家庭の優先順位に合わせてシミュレーションで比較することをおすすめします。
Q3. 繰り上げ返済をすると、住宅ローン控除が受けられなくなりますか。
A. 繰り上げ返済によって、返済開始から完済までの期間が10年未満になった場合、控除の対象から外れる可能性があるとされています。また、控除期間中の繰り上げ返済が有利かどうかは借入金利の水準によっても変わるとされているため、控除期間中に大きな金額を返済する場合は、事前に確認しておくと安心です。
Q4. フラット35の繰り上げ返済には手数料がかかりますか。
A. 原則として手数料はかからないとされています。ただし、契約形態によって条件が異なる場合があるため、利用中の金融機関に確認することをおすすめします。
Q5. 繰り上げ返済はいくらから可能ですか。
A. 金融機関の窓口で手続きする場合は100万円以上、Webサービスを利用する場合は10万円以上が目安とされています。詳細は利用中の金融機関にご確認ください。
引用元・参照元
・※1 はじめての住宅ローン「2026年6月更新【フラット35】金利推移と最新動向|長期固定金利住宅ローン」
https://finance.recruit.co.jp/article/f001/
・※2 モゲチェック「フラット35の繰り上げ返済の方法は?住宅ローン控除との関係も整理」
https://mogecheck.jp/articles/show/ArKz81lk4DAOE97oeQJV
・※3 【フラット35】公式サイト「繰上返済」
https://www.flat35.com/user/kuriage_hensai.html
・※4 SBIエステートファイナンス株式会社「住まいとお金の知恵袋」フラット35の繰り上げ返済をする前に確認したい3つのポイント
https://www.sbi-efinance.co.jp/contents/early_repayment_of_flat35/
・※5 モゲチェック「フラット35を繰り上げ返済するタイミングは?手続きと条件も確認」
https://mogecheck.jp/articles/show/bB5wrxOVq0PGqYa0kQAg
・※6 SBIエステートファイナンス株式会社「住まいとお金の知恵袋」フラット35の繰り上げ返済をする前に確認したい3つのポイント(住宅ローン控除と繰り上げ返済のシミュレーション比較)
https://www.sbi-efinance.co.jp/contents/early_repayment_of_flat35/
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